Suncius's Strategy
孫子の兵法     | HOME |


第一・始計篇 


TITLE[416] 「孫子の兵法」〜第一回〜98/02/24 17:17:41
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<原文(漢文読み)>
孫子曰く、兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず。

<訳文>
戦争は、国家の重大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。それゆえ、細心な検討を加えなければいけない。

<私からのコメント>
孫子は、この冒頭の文章にて戦争についての最も大事なことを述べています。
戦争は何も生み出しません、ただ消費するのみということは皆様もご承知のことと思います。
ですが、それだからといって避けられない戦いというのが存在するのが、この世の中の皮肉な所であり、悲劇でもあるのです。
そして、避けられない戦いがあるのであればそれをどのように戦い抜き、勝利するかを考えねばならないでしょう。
孫子は、自分の書いた兵法を読むに当たって、この事を充分に知っておいてから読んで欲しいと思っていたのではないでしょうか。
その戦いを用うるや、勝つも久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く。


TITLE[446] 孫子の兵法 〜第二回〜98/02/28 04:14:42
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<原文(漢文読み)>
故に、これを経るに五事を以ってし、これを校ぶるに計を以ってして、その情を索む。
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。
道とは、民をして上と意を同じくせしむるなり。
故に持ってこれと生くべくこれと死すべくして、危きを畏れず。
天とは、陰陽、寒暑、時制なり。
地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。
将とは、智、信、仁、勇、厳なり。
法とは、曲制、官道、主用なり。
およそこの五者は、将、聞かざることなきも、これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。

<訳文>
まず五つの基本問題を持って戦力を検討し、ついで、七つの基本条件を当てはめて彼我の優劣を判断する。
(七つの基本条件は次回連載において掲載する)
五つの基本問題とは、「道」「天」「地」「将」「法」に他ならない。
「道」とは、国民と君主を一心同体にさせるものである。
これがありさえすれば、国民は、いかなる危険も恐れず、君主と生死を共にする。
「天」とは、昼夜、晴雨、寒暑、季節などの時間的条件を指している。
「地」とは、行程の間隔、地勢の険阻、地域の広さ、地形の有利不利などの地理的条件を指している。
「将」とは、知謀、信義、仁慈、勇気、威厳などの将帥の器量に関わる問題である。
「法」とは、軍の編成、職責分担、軍需物資の管理など軍政に関する問題である。
この五つの基本原則は、将帥たるもの誰でも一応は心得ている。
しかし、これを真に理解している者だけが勝利を収めるのだ。中途半端な理解では、勝利はおぼつかない。

<私からのコメント>
前回、私は「避けられない戦いを戦い抜き、勝利するために考える」と申しました。
そして、今回に述べられている「五つの基本問題」と次回に述べる「七つの基本条件」というのが、
勝利するために考える第一歩と言えましょう。

まず、第一の基本問題である「道」ですが、これは古来より中国では無名の師(大義名分の無い戦争)を忌み嫌いました。
それは、どのように悪虐な君主においてさえ無名の師を行う事にためらいを感じるほどです。
一例として「三国志演義」を見てみましょう。
「三国志演義」で曹孟徳は悪とされていますが、一度たりと大義名分に欠いた事はありません。
そして、どのような反乱であっても「君側の奸を撃つ」や「悪行の限りを尽くした君主を撃ち、世の中を正しく導く」など、
必ずと言っていいほど大義名分を掲げています。
このように、この基本条件の「道」とは大事な意味合いが含まれていた事がわかります。

その次の「天」「地」ですが、これは諸兄も良くご存知のとおり「天の時、地の利」です。
説明するまでも無いと思いますが、一応簡単に説明を付け加えておきます。
例をもってすれば、季節は冬、雪の多い地方でしかも地形は険阻である。敵軍の方は早くから有利な場所に陣地を築いている。
・・・もうお分かりになった事と思います。これでは、勝てる戦も勝てる道理はありません。
このように、季節や場所などの条件を正しく整えると言う事を言っているのだと思われます。

「将」は将帥としての資格。
将帥が有能か無能かはたいへん大きな問題です。有能であれば兵を損なわずに勝つ方策を見つけ出し勝とうとするでしょう。
たとえ、戦闘になったとしても有能であるか無能であるか大きな差が生まれます。

そして、最後に「法」です。
編成がばらばら、ある人は二つ以上の役割を持ち、違うある人はなにも役割がない。補給もままならない軍隊を想像してみて下さい。
・・・絶対に勝てる訳が無い事をお分かりになられたでしょうか。

このように、どの問題を欠いても敗北につながる事がわかります。
孫子は、始計篇で重要かつ基本の事を述べているのです。
これを抜きにして、兵法を考えると言う事は頭が無いのに物を考えるような物であると言えるでしょう。
そして、これらの問題を深く理解して行く事が重要であると孫子もその兵法書のなかに述べておられます。


TITLE[695] 孫子の兵法 〜第三回〜98/04/06 09:53:47
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<原文(漢文読み)>
故に、これを校ぶるに計を以ってして、その情を索む。
曰く、主、孰れか有道なる、将、いずれか有能なる、
天地、孰れか得たる、法令、いずれか行なわる、
兵衆、孰れか強き、士卒、いずれか練いたる、賞罰、孰れか明らかなる、と。
吾、これを以って勝負を知る。

<訳文>
さらに、次の七つの基本条件に照らし合わせて、彼我の優劣を比較検討し、戦争の見通しをつける。
一、君主は、どちらが立派な政治を行っているか。
二、将帥は、どちらが有能であるか。
三、天の時と地の利は、どちらに有利であるか。
四、法令は、どちらに有利であるか。
五、軍隊は、どちらが精強であるか。
六、兵卒は、どちらが訓練されているか。
七、賞罰は、どちらが公正に行われているか。
私は、この七つの基本条件を比較検討する事によって、勝敗の見通しをつけるのである。

<解説>
この7つの基本条件は、前回に述べた5つの基本問題を考えると同時に、彼我の勢力を判断するものであると考えられます。
自分の事ばかりを見ていても相手を知らないのでは勝つ事はできないと孫子は述べており、
その比較の条件として、5つの基本問題と7つの基本条件をあげているのではないでしょうか。


TITLE[781] 孫子の兵法 〜第四回〜98/04/12 08:18:30
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<原文>
もしわが計を聴かば、これを用いて必ず勝たん。これに留まらん。
もしわが計を聴かずんば、これを用うるといえども、必ず敗れん。これを去らん。

<訳文>
王が、もし私のはかりごとを用い、軍師として登用するなら、必ず勝利を収める事が出来る。それなら、私は貴国に留まろう。
逆に私のはかりごとを用いなければ、仮に軍師として戦いに望んだとしても、必ず敗れる。それなら、私は貴国にとどまる意志はない。

<解説>
孫武が、呉王闔廬に見えた時に言った言葉だと思われる。
この時にかの有名な、孫武が婦人部隊を連兵する有名な場面が続くのだが、
この連兵の様子があまりにも「史記」とかけ離れているので、疑問の声もある。


TITLE [1961] 孫子の兵法 〜第五回〜 98/08/06 12:27:54
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原文
計、利として以って聴かるれば、
すなわちこれが勢をなして、以ってその外を佐く。
勢とは利に因りて権を制するなり。

訳文
以上に述べた基本条件において、こちらが有利であったとしよう。
次になすべき事は「勢」を把握して、基本条件を補強することである。
「勢」とは、その時々の状況にしたがって、臨機応変に対応することである。

解説
誰でも、基本をマスターすることは容易である。だが、それを応用できるかどうかはその人にかかってきます。
せっかく、基本を満たし条件を整えたとしても、応用の術を持たずに物事を行おうとすれば、
さほどいい結果を望むことは出来ないでしょう。
ただ、問題となるのは経験です。
経験は、どのような人でもはじめから有るものでないのは当たり前のことですが、
これが応用を助ける要因となりうるからなのです。
例えば、会社の新卒新入社員が頑張ってもそれほど結果を残せないのを見て頂ければ分かって頂けるかと思います。
まあ、たまに新卒の新入社員でもすごい働きをすることがありますが、これは理解力が高いと見ても
間違いないのではないでしょうか?
また、同じような例として三国志をご存知の方なら、馬謖が諸葛孔明に斬られた理由を思い出して頂ければ良いと思います。


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