Suncius's Strategy
孫子の兵法     | HOME |


第二・作戦篇


TITLE[625] 孫子の兵法 −第九回−97/09/15 04:10:18
WRITER橘 桜花Mozilla/2.0 (compatible; MSIE 3.02; Update a; Windows 95)

<本文>
その戦いを用うるや、勝つも久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く。
城を攻むれば、則ち力屈す。
久しく師を暴さば(さらさば)、則ち国用足らず。
それ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨を殫くさば(つくさば)、
則ち諸侯、その弊に乗じて起こらん。
智者ありといえども、その後を善くすること能わず。
故に兵は拙速を聞くも、いまだ巧の久しきを睹ざるなり。
それ兵久しくして国利あるは、いまだこれあらざるなり。
故に尽く用兵の害を知らざれば、則ち尽く用兵の利を知ること能わざるなり。

<訳文>
たとい戦って勝利を収めたとしても、長期戦ともなれば、軍は疲弊し、士気も衰える。
城攻めをかけたところで、戦力は底を突くばかりだ。
長期にわたって軍を戦場にとどめておけば、国家の財政も危機におちいる。
こうして、軍は疲弊し、士気は衰え、戦力は底を突き、財政危機に見舞われれば、
その隙に乗じて、他の諸国が攻め込んでこよう。
こうなっては、どんな知恵者がいても、事態を収拾することはできない。
短期決戦に出て成功した例は聞いても、長期戦に持ち込んで成功して例は知らない。
そもそも、長期戦が国家に利益をもたらしたことはないのである。
それ故、戦争による損害を十分に認識しておかなければならない、戦争から利益をひき出すことはできないのだ。


TITLE[641] 孫子の兵法 −第十回−97/09/17 04:49:15
WRITER橘 桜花Mozilla/2.0 (compatible; MSIE 3.02; Update a; Windows 95)

<本文>
善く兵を用うる者は、役、再籍せず、糧、三載せず。
用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。
国の師に貧するは、遠く輸ればなり。
遠く輸くれば、則ち百姓貧し。師に近き者は貴売す。
貴売すれば、則ち百姓、財竭く。財竭くれば、則ち丘役に急なり。
力屈し財殫き中原の内、家に虚し。百姓の費え(ついえ)、十にその七を去る。
公家の費え、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十にその六を去る。
故に智将は務めて敵に食む。
敵の一鍾を食むは、わが二十鍾に当たり、
キカン一石は、わが二十石に当たる。

<訳文>
戦争指導にすぐれている君主は、壮丁の挑発や糧秣の輸送を二度三度追加することはしない。
装備は自国でまかなうが、糧秣はすべて敵地で調達する。だから、糧秣の欠乏に悩まされることはない。

戦争で国力が疲弊するのは、軍需物資を遠方まで輸送しなければならないからである。
したがって、それだけ人民の負担が重くなる。また、軍の駐屯地では、物価の騰貴を招く。
物価が騰貴すれば、国民の生活は困窮し、租税負担の重さに苦しむ。
かくして、国力は底をつき、国民は窮乏のどん底につきおとされ、全所得の七割までが軍事費にもっていかれる。
また、国家財政の六割までが、戦車の破損、軍馬の損失、武器・装備の損耗、車輌の損失などによって失われてしまう。

こういう事態を避けるため、知謀にすぐれた将軍は、糧秣を敵地で調達するように努力する。
敵地で調達した穀物の一鍾は自国から運んだ穀物の二十鍾分に相当し、
敵地で調達した飼料一石は自国から運んだ飼料の二十石分に相当するのだ。


TITLE[648] 孫子の兵法 −第十一回−97/09/20 01:57:07
WRITER橘 桜花Mozilla/2.0 (compatible; MSIE 3.02; Update a; Windows 95)

<本文>
故に敵を殺すものは怒なり。
敵の利を取るものは貨なり。
故に車戦して車十乗已上(いじょう)を得れば、その先ず得たる者を賞し、
而してその旌旗を更え、車は雑えてこれに乗り、
卒は善くしてこれを養う。
これを敵に勝ちて強を益すと謂う。
故に兵は勝つことを貴び、久しきを貴ばず。
故に兵を知る将は、生民の司命、国家安危の主なり。

<訳文>
兵を戦いに駆り立てるには、敵愾心を植え付けなければならない。
また、敵の物資を奪取させるには、手柄に見合うだけの賞賜を約束しなければならない。
それ故、敵の戦車十台以上も奪う戦果があった時には、まっさきに手柄を立てた兵士を表彰する。
そのうえで、捕獲した戦車は軍旗をつけかえて味方の兵士を乗り込ませ、
また俘虜にした敵兵は手厚くもてなして自軍に編入するがよい。
勝ってますます強くなるとは、これをいうのだ。
戦争は勝たなければならない。したがって、長期戦を避けて早期に終結させなければならない。
この道理をわきまえた将軍であってこそ、国民の生死、国家の安危を託すに足るのである。


第三・謀攻篇 


TITLE[682] 孫子の兵法 −第十二回−97/10/03 17:42:39
WRITER橘 桜花Mozilla/2.0 (compatible; MSIE 3.02; Windows 95)

<本文>
孫子曰く、およそ兵を用うるの法は、国を全うするを上となし、
国を破るはこれに次ぐ、
軍を全うするを上となし、
軍を破るはこれに次ぐ。
旅を全うするを上となし、旅を破るはこれに次ぐ。
卒を全うするを上となし、卒を破るはこれに次ぐ。
伍を全うするを上となし、伍を破るはこれに次ぐ。
この故に、百戦百勝は善の善なるものにあらず。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。

<訳文>
戦争のしかたというのは、敵国を傷めつけないで降伏させるのが上策である。
撃破して降伏させるのは次善の策に過ぎない。
また、敵の軍団にしても、傷めつけないで降伏させるのが上策であって、
撃破して降伏させるのは次善の策だ。大隊、中隊、小隊についても、同様である。
したがって、百回戦って百回勝ったとしても、最善の策とはいえない。
戦わないで敵を降伏させることこそが、最善の策なのである。


TITLE[716] 孫子の兵法 −第十三回−97/10/12 05:28:32
WRITER橘 桜花Mozilla/2.0 (compatible; MSIE 3.02; Windows 95)

<本文>
故に上兵は謀を伐つ。
その次は交を伐つ。その次は兵を伐つ。
その下は城を攻む。城を攻むる法は、已むを得ざるがためなり。
櫓、フンオンを修め、器械を具う。三月にして後に成る。
距インまた三月にして後に已む。
将その忿りに勝えずして、これに蟻附せしめ、
士を殺すこと三分の一にして、城抜けざるは、
これ攻の災いなり。

<訳文>
したがって最高の戦い方は、事前に敵の意図を見破ってこれを封じることである。
これに次ぐのは、敵の同盟関係を分断して孤立化させること。第三が戦火を交えること。
そして最後の策は、城攻めに訴えることである。城攻めと言うのは、やむなく用いる最後の手段にすぎない。
城攻めを行おうとすれば、大盾や装甲車などの攻城兵器の準備に三ヶ月はかかる。
土塁を築くにも、さらに三ヶ月を必要とする。
そのうえ、血気にはやる将軍が、兵士を蟻のように城壁に取り付かせて城攻めを強行すれば、どうなるか。
兵力の三分の一を失ったとしても、落とすことはできまい。
城攻めは、これほど犠牲を強いられるのである。


TITLE[741] 孫子の兵法 −第十四回−97/10/20 23:29:34
WRITER橘 桜花Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 4.0; Windows 95)

<本文>
故によく兵を用うる者は、人の兵を屈するも、戦うにあらざるなり。
人の城を抜くも、攻むるにあらざるなり。
人の国をやぶるも、久しきにあらざるなり。
必ず全きを以って天下に争う。
故に兵頓れず(やぶれず)して、利全かるべし。
これ謀攻の法なり。

<訳文>
したがって、戦争指導にすぐれた将軍は、武力に訴える事なく敵軍を降伏させ、
城攻めをかけることなく敵城をおとしいれ、
長期戦に持ち込む事なく敵国を滅すのである。
すなわち、相手を傷めつけず、無傷のまま味方に引き入れて、天下に覇をとなえる。
かくてこそ、兵力を温存したまま、完全な勝利を収める事ができるのだ。
これが、知謀に基づく戦い方である。


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